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最高裁判所第一小法廷 昭和59年(オ)1224号 判決 1985年7月11日

上告人 反田久幸

被上告人 国 ほか一名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人岡本駿、同高梨徹の上告理由について

記録にあらわれた本件訴訟の経過に照らすと、上告人が被参加訴訟の第一審判決に対してした本件控訴を不適法とした原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 和田誠一 谷口正孝 角田禮次郎 矢口洪一 高島益郎)

上告理由

原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある。

一 本件第一審は、昭和五九年三月二六日上告人のなした独立当事者参加の申立てを却下する決定をし、また右同日、被参加訴訟の判決を言渡した。上告人は右却下決定に対しては直ちに抗告の申立てをなしたが、右判決については、第一審裁判所から判決書の送達は勿論判決期日の通知等何の連絡もなかつたため、上告人としては、判決がいつなされ、いつ当事者に送達されたか全く知り得なかつた。上告人は被参加訴訟の結果に極めて重大な利害関係があるため右判決言渡期日を知るべく、本件記録上明らかな如く、昭和五九年四月一一日付「照会状」で、第一審裁判所に対し、被参加訴訟の判決がなされたか否か等を問い合わせ、その結果、同年三月二六日に判決がなされたことを知り、四月二五日になつてようやく右判決謄本を受領できた(一件記録が東京高等裁判所と同地方裁判所の間を往復していたため上告人への交付が遅れた)。そこで上告人は右判決内容を検討し、四月二七日付で控訴を提起したのである。

二 原審は、その理由中で「第一審裁判所が独立当事者参加の申立てを却下し、被参加訴訟について終局判決の言渡しをした場合、参加申立人は、申立却下の裁判に対する不服の申立てをするとともに被参加訴訟の控訴期間内に限り、右判決に対する控訴の申立てをすることができるものと解すべきである。」と述べている。

しかしながら、上告人としては前記の如く二当事者の控訴期間内に控訴をしようにもする機会が裁判所によつて全く与えられなかつたこと(前記「照会状」に対しても「照会に応ずべき根拠が見当ら」ない旨明言している)、判決正本を受領してから二日後には控訴を提起していること、独立当事者参加の性質上、控訴期間も、三当事者への送達の日からそれぞれ別個独立に起算すべきであること、等を考え合わせると、本件のごとき場合には民事訴訟法三六六条の解釈として、参加申立人である上告人が判決謄本を受領した日から控訴期間を起算するのが正当である。本件を控訴期間経過後の申立てと判断した原審は民訴法三六六条の解釈を誤つたものであり、この違背は判決に影響を及ぼすこと明白である。

なお参加申立却下決定の抗告審で原決定を取消す旨の決定があつたのは本年六月一四日であつたこと本件原判決の指摘するとおりであることを附言する。

【参考】 二審判決(東京高裁昭和五九年(ネ)第一二四〇号 昭和五九年七月三〇日判決)

主文

本件控訴を却下する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

職権をもつて、本件訴訟の経過を一件記録によつてみると、控訴人は、昭和五八年五月三〇日、被控訴人ら間の本件訴訟の係属した原裁判所に、独立当事者参加の申立て(同庁同年(ワ)第五四四四号)をしたこと、原裁判所は、これより先の同年四月一九日本件被参加訴訟の口頭弁論を終結し、翌五九年三月二六日判決の言渡しをし、即日同判決正本は、被控訴人両名に送達されたこと、同日、原裁判所は、右参加申立てを却下する決定をし、控訴人は、翌月一日当裁判所に右却下決定に対する抗告の申立てをし、同裁判所は同年六月一四日同決定を取り消す旨の決定をしたこと、被控訴人両名は、前記判決に対する控訴の申立てをしなかつたこと、本件控訴の申立ては、同年四月二八日になされたことが明らかである。

ところで、第一審裁判所が、独立当事者参加の申立てを却下し、被参加訴訟について終局判決の言渡しをした場合、参加申立人は、申立却下の裁判に対する不服の申立てをするとともに、被参加訴訟の当事者の控訴期間内に限り、右判決に対する控訴の申立てをすることができるものと解すべきである。

しかしながら、前示の経緯に照らすと、控訴人の本件控訴の申立ては、被控訴人両名の控訴期間の経過後になされたものであることが明らかである。

してみると、本件控訴は、不適法であつて、欠缺を補正すべき余地がないから、口頭弁論を経ないで、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦 鹿山春男 赤塚信雄)

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